『エターナル・サンシャイン』(ネタバレなし)

john_n2005-03-23

マルコヴィッチの穴』の脚本家チャーリー・カウフマンと『ヒューマンネイチュア』でカウフマンと組んだミシェル・ゴンドリーが監督。
あらすじはこんな感じ。ジョエル(ジム・キャリー)は、喧嘩別れした恋人・クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が自分との記憶を消去したと知り、自分も記憶除去することに。けれど、記憶をさかのぼるに従って、忘れたくない素敵な日々を消したくなくなり、手術をやめるよう記憶の中でもがく。
すごく切なくて、ぎゅーっと胸をつかまれる素敵な作品でした。途中まで、キルステン・ダンストの話は余計なんじゃないかな?と疑問に思っていたのだけれど、そんなことありませんでした。ジム・キャリーが冴えなくて、情けない感じの普通の男の人を演じてるんだけど、それがすごく愛しかった。ケイト・ウィンスレットもパンクで変わった女の子を上手に演じてた。ああいうちょっと強引な女の人って、羨ましい。自分のペースに巻き込んでってしまうんだけど、巻き込まれてる方は、案外それが心地よかったりするんだよね。
記憶の断片を辿っていく映像は、すごくいい感じ。監督は違うけど、『マルコヴィッチ…』の最後の方で妊婦の女の人とキャメロン・ディアスがマルコヴィッチの深層心理みたいのの中をぐるぐる追いかけるシーンがあったけど、少し近い感じがあるかな。私は断然今回の方が好きなんだけど。冬の海や、部屋の中に降る雨、砂に埋もれたベッド。この記憶だけは消さないでとジョエルが思ったベッドの中のシーン。とても繊細な感じ。
この映画は、ラブストーリーなんだけどただのラブストーリーじゃない感じ。設定は非現実的だけれど、恋愛の描写はとても現実的。「忘却はよりよき前進を産む」とニーチェの言葉をキルステンが言うけど、ほんとにそうかな。すごくすごく大切だった人の記憶を消して、それがよりよき前進に向かうんだとしても、私は消したくないな。消してしまっても、きっと喪失感みたいなものは漠然と残っていると思う、そう思いたい。